2016-10-19

SpiritDay – 性的少数者である子どもたちに対するいじめをやめさせるために

思春期は誰にとっても多かれ少なかれ人生の苦悩の時期ですが,特に性的少数者にとっては,思春期に sexuality の問題がよりいっそう深刻になります.Transgender の人々は,思春期よりずっと前から,言葉を話し始める満 1, 2 歳の幼児期から,自身の生物学的性別とは異なる性別を生きていることによる違和感に悩まされますが,やはり二次性徴が身体に現れてくる思春期に違和感はさらに強まります.

そして,性的少数者のうち少なからぬ人々が,学校などにおける偏見といじめに苦しめられます.その問題は,今年の 1月に NHK の或る番組でも取り上げられました.そこで紹介されている2014年に行われた或る調査の結果は次のとおりです:




深刻に受けとめるべき調査結果です.

全体主義的な傾向の強い日本社会は特に,何らかの意味で少数者である人々に対してあらゆる状況で排除的であり,性的少数者にとっても非常に生きづらい社会です.

USA では,1970年代以来,さまざまな LGBT 人権擁護運動が展開されています.

特に,1985年に設立された GLAAD (Gay and Lesbian Alliance Agaist Defamation の頭文字であったが,今は団体の正式名称)という NPO は,2010年以来,毎年10月の第三木曜日を SpiritDay と名づけて,性的少数者である子どもたちに対する学校などにおけるいじめをやめさせるためのキャンペーンを行っています.

今年は,10月20日がその SpiritDay です.日本でも是非広げて行きたい運動です.Spirit Day という表現は,そのままでは日本語に訳しにくいので,何か良い名称を考える必要があるでしょうが.

現在,日本の政治は右傾化しつつあると言われていますが,日本社会の全体主義的な体質は,戦前は言うに及ばず,1945年以降も一貫しており,何ら改善されていません.そのような日本人の心性を変えて行くための第一歩は,何らかの意味で少数者である人々すべての存在の尊厳を尊重することです.

LGBT カトリック・ジャパンとしては,特に,カトリック信仰を標榜する初等中等教育の学校における性的少数者いじめの問題が解消されるよう,積極的に活動して行きたいと思います.

神の愛において

ルカ小笠原晋也


付録:教皇 Francesco が2016年4月に発表した使徒的勧告 Amoris laetitia(愛の喜び)の第250段落: 

主イェスは,限り無き愛において,各人のために – 例外無く,あらゆるひとりひとりのために – 御自身をおささげになった.そのような主イェスの態度を,教会は自身のものとする.シノドスに参加した神父たちとともに,わたしは,同性愛の性向を顕わす者を内に擁する経験 – 親にとっても子にとっても容易ならざる経験 – を生きている家族の状況を考慮した.それゆえ,我々は,まず,就中,このことを改めて断言したい:あらゆる人間は,その性的性向にかかわりなく,その尊厳において尊重されねばならず,敬意を以て – 「あらゆる不当な差別の刻印」(カテキズム 2358 段落)を避ける配慮を以て,および,特に,あらゆる形の攻撃や暴力を避ける配慮を以て – 迎え入れられねばならない.重要なのは,逆に,同性愛の性向を顕わす家族メンバーが,その人生において神の意志を了解し,かつ十全に実現し得るために必要な手助けを受益し得るよう,教会が敬意を以てその家族に寄り添うことが確実にできるようにすることである.