2016-12-24

降誕祭おめでとうございます ‒ ルカ小笠原晋也より

降誕祭おめでとうございます!

Λόγος [ Logos ] の受肉,主 Jesus Christ のお誕生を祝いましょう!神の子 Jesus の御降誕は,存在の真理の自己示現です.

そして,わたしたちは皆,男も,女も,性的少数者の人々も,誰もが,神の子です.神により創造されたものとしての人間は,誰もが,ひとりの χριστός christus : 聖別のために塗油された者]です.ですから,人間は,誰もが,存在の尊厳を有しています.

そのことを,わたしたちの主 Jesus Christ は,御自身の誕生を以て,証明してくださっています.神に感謝しましょう!

さて,sexual minority の人々とともに歩むわたしたち有志カトリック信者の活動 LGBTCJ にとって,2016年はとても実り多き年でした.Deo gratias !

まず,何よりも,LGBT 特別ミサ.社会的に差別されてきた人々の司牧に御理解のある神父様たちにより,今年7月から毎月一回,性的少数者限定の御ミサを立てていただけるようになりました.日本のカトリックの歴史のなかで初めてのできごとです.主の恵みに感謝します.そして,御協力くださる神父様がたに感謝します.LGBT 特別ミサは,来月からも継続されて行きます.LGBTIQ+ の人々が各人の所属する小教区の御ミサに何の気がねもなく参加することができるようになるときまで.

世界的には,先月までの12ヶ月間は慈しみの特別聖年でした.それによって教皇 Francesco は,このことを強調しました:キリスト教の根本は,律法に存するのではなく,愛に存する.誰をも排除せず,あらゆる人を包容する神の愛です.

神の律法に準拠する司牧が,律法の普遍性にこだわるあまり,例外的少数者を排斥し,差別することになるのに対して,神の愛を実践する司牧は,わたしたちひとりひとりに寄り添い,各人を個別的に導いてくれます.神の愛へ心を開く人は,誰もが救済されます.

聖パウロが強調しているとおりです : πλήρωμα οὖν νόμου ἡ ἀγάπη [すなわち,愛は,律法の完成である](Rm 13,10).

いまだに聖書の文言の断片を以て性的少数者を断罪する者たちは,このことがわかっていないのです:「イェス・キリストにおいて命を与える霊気の律法は,罪と死をもたらす律法からわたしを解放してくれた」(Rm 8,2) ; 「キリストは,わたしたちを律法の呪いから贖い出してくださった」(Ga 3,13).

また,4月には教皇 Francesco は,使徒的勧告 Amoris laetitia [愛の喜び]を発表し,インタヴューにおいてだけでなく,公式文書において初めて,性的少数者を積極的に包容する司牧的配慮を明確に打ち出しました.

残念ながら,教皇 Francesco は,同性カップルに結婚の秘跡を授けることを容認するところまでは踏み込みませんでした.しかし,それを以て彼が十分に liberal でないと非難することはできません.彼は,教会の分裂を招かないよう慎重であるだけです.実際,同性婚法制化をめぐっては,幾つもの国々で世論は賛否に二分され,激しい対立が起きています.ですから,律法にこだわらないでおきましょう.異性カップルであれ同性カップルであれ,ふたりの人間が誠実に互いを愛し合うとき,それは神の愛の徴です.神は,慈しみ深く,ふたりを祝福してくださいます.それこそが,本当の結婚の秘跡です.

いわゆる gender theory に対する教皇 Francesco の批判は,LGBT 活動家たちから,性的少数者の問題に関する無理解として非難されました.しかし,それも当たっていません.教皇が言いたいのは,このことです : sexuality は,神による創造の賜であって,社会学的な人為産物ではない.

議論の混乱を避けるためには,わたしたちは性別について三つの概念を区別しなければなりません.ひとつは,生物学的な sex ; ふたつめに,社会学的な gender ; そして第三に,ontological sexuation [存在論的な性別化].この第三の性別こそが,神による創造の賜です.それは,生物学にも社会学にも還元され得ません.性的少数者に関して性別を論ずるとき,とりわけ transgender の問題を論ずるときは,わたしたちは,ontological sexuation の概念に準拠しなければなりません.それは,性に関して心身二元論を超克するための唯一の道です.

先日 80 歳のお誕生日を迎えたパパ様が,これからも笑顔で元気にカトリック教会を全包容的な神の愛の完成へ導き続けることができますように!

最後に,sexuality の問題は,女性や性的少数者の人権の問題であるにとどまりません.女性と性的少数者に対する差別を克服するための社会活動と性理論によって,このことが明らかになってきました:人間が神の愛に対して心を閉ざす悪へ陥ってしまう理由は,男性中心主義 [ androcentrism, male chauvinism ] に存する.そして,男性中心主義を動機づけているのは,家父長主義 [ patriarchalism ] であり,さらにそれを動機づけているのは,phallofascism です.

性的少数者を擁護する活動は,フェミニズムとの連帯において,男性中心的な日本社会の構造を変革する可能性を追求して行きます.そして,その際,わたしたちを導いてくれるのは,神の愛です.

また,資本主義と科学技術による支配のもとで,日本社会も世界も,人間の尊厳がますますないがしろにされる方向へ向かって行きつつあります.そのような動向に対する最も有効な批判を可能にしてくれるのも,神の愛です.

喜ばしき御降誕祭と幸多き新年を皆様とともにお祈りいたします.

神の愛の恵みがますます豊かに皆様とともにありますように!

LGBTCJ 共同代表
ルカ小笠原晋也