2017-03-16

日本カトリック司教団メッセージ『いのちへのまなざし』増補改訂版の出版




日本カトリック司教団のメッセージ『いのちへのまなざし』増補改訂版が出版されました.

幸田和生司教様を始め,御尽力くださいました関係者すべての方々に,御礼を申し上げたいと思います.

LGBT については,27段でこう述べられています:

「イエスはどんな人をも排除しませんでした.教会もこのイエスの姿勢に倣って歩もうとしています.性的指向のいかんにかかわらず,すべての人の尊厳が大切にされ,敬意をもって受け入れられるよう望みます.同性愛やバイセクシャル,トランスジエンダーの人たちに対して,教会はこれまで厳しい目を向けてきました.しかし今では,そうした人たちも,尊敬と思いやりをもって迎えられるべきであり,差別や暴力を受けることのないよう細心の注意を払っていくべきだと考えます.例外なく,すべての人が人生における神の望みを理解し実現するための必要な助けを得られるよう,教会は敬意をもってその人たちに同伴しなければなりません.結婚についての従来の教えを保持しつつも,性的指向の多様性に配慮する努力を続けていきます.」

注において,『カトリック教会のカテキズム』2358段と Amoris laetitia no. 250 への言及が為されています.

日本カトリック司教団が,主の全包容的な愛にもとづいて,性的少数者に関して明確な包容的メッセージを発してくださったことに,感謝したいと思います.

カトリック信者のなかには,今もなお,『カテキズム』の教えに反して,LGBT 差別の言動を続けている人々がいます.すべてのカトリック教会からそのような差別をなくして行くことを今回の司教団メッセージが可能にするよう,期待したいと思います.

同性婚については,カトリック教会内に修復困難な分裂を生ぜしめるかもしれない敏感な問題であり,教皇 Francesco も慎重な態度を崩していないので,日本司教団にも教皇以上のことを期待することはできない,と承知しています.

しかし,神の御前にあらゆる人間は皆平等であるのですから,誰の結婚も,異性カップルであろうと同性カップルであろうと,神の愛の徴としての真摯な愛にもとづくものであれば,秘跡であるはずです.わたしたちは今後も,カトリック教会が同性婚を異性婚と同等に扱うようになるよう,求め続けて行きたいと思います.

また,教皇 Francesco は,2016年6月,「カトリック教会は同性愛者に謝罪すべきだ」とおっしゃいました.しかし,日本司教団のメッセージからは,LGBT に対する差別の長い歴史に関する教会の謝罪の気持ちを読み取れません.何らかの機会に是非,明確な謝罪表明をお願いしたいと思います.

なお,用語の問題をひとつ指摘しておきたいと思います.「性的指向」のもとに transgender のことまでが語られていますが,現在,一般的には「性同一性」は「性的指向」とは区別されています.この点についても,若干の訂正または補足が必要だと思います.

ルカ小笠原晋也