2018年12月24日月曜日

降誕祭の御挨拶,ルカ小笠原晋也 LGBTCJ 共同代表

Charles Le Brun (1619-1690), Nativité (1689), Musée du Louvre

主の御降誕おめでとうございます!

神とわたしたちをつなぐ愛のしるしとして,神は,御自身のひとり子 Jesus をわたしたちのところに使わしてくださいました.そして,それによって,わたしたちひとりひとりを,神の子としてくださいました.神の愛の恵みに感謝しましょう!そして,その善き知らせに喜びましょう!

世界的に言って,カトリック教会は,この一年間,聖職者による青少年に対する性的虐待の事件によって大きく揺るがされました.多数の被害者のために改めて祈りたいと思います — 性的暴力による心的外傷の作用は,適切な治療を受ける機会がなければ,何十年間でも持続し得ます.

周知のように,カトリック聖職者の pedophilia の問題と,それに起因する性的虐待の事件とが大々的に表面化したのは,2002 年,The Boston Globe 紙が Boston 大司教区におけるスキャンダルを暴露したことによってでした.しかし,実際には,カトリック教会はその全歴史を通じてその問題を抱え続けてきたはずです.21世紀初頭に至るまで,事件はひたすら隠蔽されてきただけです.

聖職者の pedophilia の問題を隠蔽しながら,他方で,カトリック教会は何をしてきたか?一般信徒における homosexuality の断罪です — あたかも,そうしておきさえすれば聖職者の pedophilia の防止のために十分であるかのように.何という偽善と欺瞞に満ちた態度でしょう!

カトリック教義における homosexuality の断罪を条件づけているのは,実は,聖 Thomas Aquinas によってキリスト教に輸入された Aristoteles 形而上学です.それによって,形而上学的な目的論がカトリック教義に持ち込まれました.生殖を目的としない sexuality は許されないという思念は,それに根拠づけられています.詳しくは,『LGBTQ とカトリック教義』を参照してください.

LGBTQ がカトリック教会に対して提起している問題は,実は,単に sexuality にかかわることだけではありません.むしろ,カトリック神学に染みついた Aristoteles - Thomas Aquinas の形而上学を,我々は今やそこから一掃しなければならない — その非常に本質的に重要なことを,LGBTQ はカトリック教会に教えてくれました.わたしは,今年,そのことに明確に気がつくことができた,と思っています.

今月の始め,教皇 Francesco の新たなインタヴュー本『召命の力』が出版されました.出版に先立って,homosexuality に関する部分の抜粋がイタリアの新聞に掲載され,それにもとづいて,英語圏では「教皇は,カトリック教会から homosexuality を排除するよう方向転換した」とさえ報道されました.しかし,それは誤解です.そのことを検証したブログ記事「『召命の力』のおける教皇 Francesco の homosexuality に関する発言についてを別に書きました.是非お読みください.

わたしたちの月例 LGBTQ+ みんなのミサは,2016年07月の開始以来,二年半続いています.主に感謝!そして,今までに御協力くださった神父様がた,一般信徒の方々,会場を提供してくださっているカトリック施設の責任者の方々,そして,ミサ参加者の皆さんに,改めて感謝します.来年以降も継続して行くことができますように!そして,ほかの都市においても,同様の活動が広まって行きますように!

教皇 Francesco は,2018年03月,非常に注目さるべき使徒的勧告 Gaudete et exultate を発表しました.しかし,そこにこめられた彼のメッセージは,性的虐待スキャンダルのせいであたかもすっかり忘れ去られてしまったかのようです.あらためて,その最後の段落 (nº 177) を引用しておきたいと思います:

以上の文章が,全教会が聖性の欲望 [ il desiderio della santità ] を奨励することに専念するために有用であることを,わたしは望む.聖霊に求めよう:神の最大の栄光のために,聖なるものでありたいという強い欲望 [ un intenso desiderio di essere santo ] をわたしたちのうちに注ぎ込みたまえ,と.そして,聖なるものであろうとする努力において,わたしたちは互いを助け合おう.そうすれば,わたしたちは,世がわたしたちから取りあげ得ない幸福を,分かち合うことになるだろう.

新たな年2019年が,カトリック教会にとって,形而上学を超克するための新たな出発の年となりますように!そして,それによって,ますます,神の全包容的な愛に忠実になって行くことができますように!それこそ,第二ヴァチカン公会議において示唆されたカトリック教会の方向性です.

改めて,主の御降誕おめでとうございます ! Merry Christmas ! Joyeux Noël ! Buon Natale ! ¡Feliz Navidad!

ルカ小笠原晋也