2020-02-11

わたしは ゲイである息子を誇りに思います

2020年01月16日,「カミングアウト・ストーリー」と題された本 — LGBTQ である子どもを持つ親たちと彼女との共著 — を持って,ソウル南西部にあるカトリック教会の前で写真撮影のためにポーズをとる Hong Jung-seun


わたしは ゲイである息子を誇りに思います 

LGBTQ である子どもを親が受け入れることができるよう 手助けする母


Hong Jung-seun は,彼女の息子 Jiho (38) が,12 年前に,ゲイであることを彼女に打ち明けたとき,彼女の世界が停止したかのように感じた. 

熱心なカトリック信者である彼女は,何度も神にたずねた :「なぜ わたしと わたしの家族は このような個人的な危機に直面しているのですか?」,「わたしは,人生のなかで,どんな悪いことをしたのでしょう?」彼女は,息子が「正常」な生活を送れるよう,彼の性的指向を変えてください,と神に頼んだ. 

結局,変わったのは彼女の方だった.

「わたしは,神に仕えるために,一身を捧げてきました.なのに,なぜ わたしの息子が?それは,わたしが何か悪いことをしたことに対する罰なのだ,とわたしは考えました.わたしは,神を憎みました」と,Hong は,The Korea Herald とのインタヴューの際に,言った.

息子のカミングアウトの後,しばらくの間,彼女は,食事することができなかった.精神的なショックと,認めたくないという気持ちと,罪意識のために,何日間も眠れなかった.気分は,めまぐるしく変わった.

LGBTQ の人々が,しばしば,否定され,差別され,憎悪の対象となる韓国社会において,息子の性的指向は,彼の人生にとって,および,彼女の人生にとって,何を意味するのか,という問いが,彼女の頭にこびりついた.

ひとりで長い時間を祈りに費やしたあと,彼女は悟った:神は,彼女を罰しているのではなく,愛と受容の徳を彼女に教えているのだ.

「わたしの人生の目標は,息子を良い大学に入れ,彼に良い仕事を見つけさせ,彼が良い家族を持てるようにすることでした.しかし,わたしは,わたしが彼にこうあって欲しいと思うような彼ではなく,今あるがままの彼を見て,受け入れることを,学びました」と 彼女は言う.「わたしには,命あるものを変えることはできないが,それを抱きしめることはできる,ということを,神はわたしに教えてくれました」.

「息子のカミングアウトがなかったなら,わたしは,偏見を打ち破ることなしに,社会的に差別されている人々に心から共感することができないままに,生きて,死んでいたでしょう」と 彼女は言った.「わたしの視界は広がり,わたしの世界は豊かになりました.わたしは,感謝することの意味を学びました」.

今,Hong は,LGBTQ である子どもを持つ親たちのグループを,主宰している.グループは,月に一度,三時間の会合を持っている.それは,同様の悩みを持つほかの親たちを支える彼女のやりかたである.

韓国において,homosexuality は非合法ではないが,LGBTQ の人々に対する差別は社会のなかに広く残っている.韓国の LGBTQ の人々の多くは,社会的断罪を恐れて,クローゼットに閉じこもったままである.

2019年に発表された OECD[経済協力開発機構]の レポート によると,韓国は,LGBTQ 包容度に関しては,調査対象であるメンバー国[35ヶ国]のなかで,下から 4 番目である[日本は 下から 11 番目].OECD 全体の平均が 10 点中 5.1 であるのに対して,韓国は 2.8 点である[日本のポイントは ほぼ平均値].

LGBTQ ティーンズは,さらに弱い立場に置かれているように思われる.

韓国の人権委員会が 2014 年にした調査によると,LGBTQ ティーンズの 54 % が学校におけるいじめや差別を経験しており,19.4 % が自殺未遂を経験している.

Hong のグループ会合に参加している親たちの大多数は,カムアウトしたばかりのティーン年齢の子どもを持っている.そのような子どもたちは,生死の境界線上を歩んでおり,助けを求めているのだ,と Hong は言った.

「わたしの息子が神経過敏になっていた時期がありました.そのとき,わたしは,高校入試のための勉強のストレスのせいだろう,と思っていました.息子がひとりで恐怖と孤独に耐えねばならなかったのだと思うと,申しわけない気持ちになります」と 彼女は言った.

彼女は,息子のために,LGBTQ の人々が繁栄することができ,あるがままで幸せになれる世界を,望んでいる.

「最も緊急には,差別を禁止する法律が必要です.LGBTQ である子どもを持つ親たちは,毎日,子どもたちの安全のことを心配しています.わたしは,ただ,わたしの息子が この韓国社会で ほかの人々と同様に安全に生きて行くことができることを,欲しているだけです.特権を求めているわけではありません」と彼女は言った.

LGBTQ の人々が人権を主張し,自分らしい外見を表現することに対して露骨に反対しているプロテスタントのグループに関して,彼女は,宗教は橋を架けるものであって,壁を造るものであってはならない,と付け加えた.

それでも,Hong には,ポジティヴな変化 — ゆっくりしたものではあるが — の徴候が見える.

Hong が主宰するグループは,2020年01月,韓国のカトリック人権委員会から Lee Don-myung 賞 — 韓国の民主化に貢献した人権擁護弁護士を記念して創設された賞 — を授かった.

韓国のプライド・パレードも,年々 規模が大きくなってきており,ソウルの中心部で行われた 2019 年のパレードには,LGBTQ の人々とサポーターたち,計八万人が参加した.

「もはや,息子のことは心配の種ではありません.彼は,幸福の源であり,感謝の理由であり,より豊かに,より多彩になる世界への架け橋です.ですから,彼がわたしの人生のなかに現れてきてくれたこと,そして,彼が今の彼であることに,わたしは日々 感謝しています」と彼女は言った.

「わが息子よ,わたしのために より大きな世界を開いてくれて,ありがとう」と彼女は言った.

(翻訳:ルカ小笠原晋也)