2022年1月12日水曜日

カトリック教会は LGBTQ 信者たちへのアプローチを 変えつつある

Papa Francesco, 2022年01月06日の Angelus にて


カトリック教会は LGBTQ 信者たちへのアプローチを 変えつつある


London で 発行されている 歴史ある カトリック週刊誌 The Tablet の website に,進歩派の vaticanist の ひとり Christopher Lamb が 今月 10日付で The Church is changing its approach to LGBTQ Catholics – analysis[教会は LGBTQ カトリック信者へのアプローチを 変えつつある — 分析]と題された 記事を 書いています.その記事は,従来 カトリック教会から 断罪され 排除されてきた LGBTQ の人々に対する Papa Francesco の 包容的な 司牧的配慮のうち 比較的 最近のものを まとめています.その記事を すべて 邦訳する必要は無いと思われますので,ひとつの象徴的な人事異動のニュースを中心にして,紹介します.

それは,今月10日付で 発表された 人事異動です:教皇庁 教理省の 第 2 位の ポスト 書記 (segretario) を 務めていた Giacomo Morandi 大司教(56 歳)を,Papa Francesco は,その職から 解き,北イタリアの Reggio Emilia-Guastalla 教区(大司教区ではない)の 司教に 任命した(肩書きは 大司教のまま).

これは,明白な 左遷です.その理由を,National Catholic Reporter 紙は 今年 予期されている 教皇庁の組織改革に 関連づけていますが,他方,イェズス会の America 誌は こう分析しています : Giacomo Morandi 大司教は,昨年03月15日に発表された 教理省の Responsum ad dubium[疑問への回答]— そこにおいて 教理省は 愛しあう同性どうしのカップルの関係を祝福すること(準秘跡として祝福すること)を 禁止した,なぜなら「神は罪を祝福しない」から — の 作成の 陰の首謀者 と見なされている.問題の Responsum ad dubium は,LGBTQ カトリック信者たちを とても傷つけた.その傷を癒すために,昨年,Papa Francesco は さまざまなメッセージを 発してきた(こちらの記事を参照してください : 1) パパ フランチェスコは 教理省の「同性カップルの祝福は違法」の判断に対して 批判的? ; 2) パパ フランチェスコは 最近の書簡で New Ways Ministry への感謝を 表明した ; 3) Papa Francesco の Sister Jeannine Gramick への 書簡).Giacomo Morandi 大司教を教理省から追放する この人事異動は,それらのメッセージの文脈のなかに 位置づけられる.

そのほか 記事のなかで Christopher Lamb は,LGBTQ カトリック信者のための司牧活動を積極的に展開し続けている Father James Martin SJ に対する Papa Francesco の 応援にも 言及しています.Papa Francesco は,2017年04月12日に James Martin 神父を 教皇庁の Dicastero per la comunicazione[コミュニケーション庁]の コンサルタント(計 13 人のうちの ひとり)に 任命し,また,2019年09月30日に James Martin 神父と 個別に接見していますが,さらに,昨年06月21日付の書簡で 彼の LGBTQ 信者のための活動に関して 彼に 感謝と励ましの言葉を 書き送っています.

また,直接 Papa Francesco にかかわることではありませんが,Christopher Lamb は,今月06日,Charles Scicluna マルタ大司教(彼は 教皇庁 教理省の ふたりの副書記のうちの ひとりでもあります)が 彼の大司教区に属する 司祭 David Muscat に対して 彼の homophobic な 発言のゆえに 厳重注意の処分を与えたことにも 言及しています — そのような理由で 司教 ないし 大司教が 司祭を処分するということは カトリック教会の歴史のなかで 先例の無いことなので.

問題の司祭 David Muscat は,彼の Facebook に,ある殺人事件の容疑者に関して「gay であることは 悪魔に取り憑かれていることよりも 悪い」と 投稿しました.それに対して,人権や社会正義の分野を担当する マルタ共和国政府の国務大臣 ふたりが 彼を 告発しました — 彼の発言は 特定の属性を有する人々に対する 憎悪を 公言するもの (hate speech) である という 理由で.その事態を受けて,Charles Scicluna 大司教も すばやく 彼に対する処分を 発表しました.David Muscat は,有罪と判断された場合,6-18ヶ月の禁固 と 23,000 euros の 罰金を課せられることになります.

司教 ないし 大司教が,司祭の homophobic な 発言を hate speech と見なして,当該司祭を処分する という事態は,カトリック教会の歴史のなかで 先例の無いことです.これも,LGBTQ に対する包容的な司牧的配慮を一貫して示し続けている Papa Francesco のおかげであることは,確かでしょう.